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[第1回]家事は家の中だけで閉じなくていい 「拡大家族」という新しい形

タスカジは、おかげさまでこの11月に創業8周年となりました。サービスとしての「タスカジ」を開始してからは、7年半になります。これまでの間に、家事代行サービス自体の理解も広がり、タスカジさんを家事のパートナーに迎えて、よりよい生活を模索される方々も増えてきました。本連載では、タスカジ代表の和田幸子がこれまでを振り返るとともに、今まさに力を入れていること、そしてこれから利用者やタスカジさんの皆さんと一緒に取り組みたいことを紹介します。第1回は、実は家事がとても苦手だった、和田の実体験から――。

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株式会社タスカジ
代表取締役 和田 幸子
横浜国立大学経営学部卒業後、富士通に入社しシステムエンジニア、新規事業開発などを担当。フルタイムワーキングマザーとしての課題認識に基づき、2013年に起業。家事代行マッチングサービス『タスカジ』を運営。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。現在は、地方自治体や企業などとの新しい取り組みや、教育機関をはじめとした講演活動など、活動の幅を広げ、「核家族から拡大家族へ」を合言葉に日々奮闘中。
日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2018「働き方改革サポート賞」受賞。

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実は家事が苦手だった 子どもが生まれて知った壁

皆さんは、どのようにタスカジを利用されていますか。お子さんが小さく、掃除や料理に手が回らないからサポートしてほしい。仕事が忙しく、家に帰ったらきれいに整った空間でくつろぎたい。そんな方のほかに、最近では依頼者さんの幅も広がり、たとえばご高齢の方のお宅や、男性の一人暮らしの方も増えてきました。数年前にブームになったドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』、通称“逃げ恥”でも、独身男性が家事代行サービスを利用している状況から物語が始まっていましたよね。

これだけいろいろな方々に親しんでいただいている今は、創業時の想像を大きく超えています。もちろん、一人でも多くの方にタスカジがお役に立てたらと思って会社を続けてきましたが、当時はあまり身近でないサービスだったので、なかなか理解されにくい状況でした。今、たくさんの依頼者さんとタスカジさんとの間につながりが生まれ、皆さんがそれぞれの人生に打ち込みながら日々の生活を過ごされている様子を拝見できることが、なにより嬉しいことです。

当時と今とでは、世の中におけるいろいろな要素が大きく変わりました。家事代行サービスの浸透の背景には、女性の社会進出がより進んだことや、家事育児は女性だけがするものではないという認識が社会全体で広まってきたことも要因の一つにあると思います。このタイミングで、「タスカジplus」を通した発信も、より充実させていきたいと思っています。手始めに、私の視点からこれまでを振り返り、お話しできればと思います。

今、私は週に2回、タスカジさんに来てもらっています。夫も私も仕事が忙しく、家事をちゃんとやろうと思うと、子どもとの時間も自分の時間もなかなか取れません。長くお願いしている方なので、もう“第2の家族”という感覚です。生まれたばかりの子どもを抱えて、どうやって仕事復帰すればいいのかと途方に暮れていたころを考えると、天と地ほど違うなと思います。

家事代行サービスには、必ずニーズがある

実は私、家事がとても苦手です。IT関係の仕事に打ち込んでいたので、結婚したときも、家庭に入る考えはまったくありませんでした。夫にも「家事は分担で」と念押ししたくらいでした。

タスカジは、何より私がほしかったサービスです。でも、もちろん最初から「家事を頼みたい人」と「家事が得意な人」をインターネットのプラットフォーム上でつなげる……という今の仕組みを思いついたわけではありません。

乳児の子育てと家事に手が回らず、仕事の復帰も間近に控えた私がまず助けを求めたのは、個人のベビーシッターさんでした。海外では、個人間契約で費用を抑えながら、ベビーシッターや家事代行を頼むのがごく一般的だと聞いたからです。

ただ、日本で探そうとしたら、本当に大変で。友人知人のつてをたどって面談やお試し期間を重ねて、やっと「この人にお願いしたい」という方に巡り会えました。その方に簡単な家事もサポートしてもらうようになると、生活はぐっと快適になり、心に余裕が生まれたんです。

そんな経験から、手頃な価格で依頼できる家事代行サービスがあったら、助かる人がたくさんいるはずだと考えました。試してみるのに戸惑いがあるなら、私が説得してでも使ってみてほしいと思ったくらいです。当時は、共働き家庭がどんどん増えていったころ。仕事と家事や育児の両立に悩む方々の力になりたい、この社会課題を何とかしたいという使命感に似た気持ちが、起業につながりました。

「核家族から拡大家族へ」――家族の再定義

とはいえ、サービス立ち上げ当初はまったくユーザー数が伸びませんでした。約10年前の日本には、高額な家事代行サービスしかなく、一部の富裕層が使うものというイメージが強かったのです。

タスカジの仕組みを話すと、みなさんが「いいサービス」「使ってみたい」とおっしゃいます。でも、実際に試してみるところまで至らないのです。賛成だけれど自分が使うには抵抗がある、という方がほとんどで、「お金を払って家事を頼むなんて、なまけているのでは」という罪悪感すら持たれているのです。心理的なハードルがあるのだと痛感しました。

これをどうしたら払拭できるのか。ただ知ってもらうだけでは難しいと思ったので、2つの工夫を考えました。ひとつは、実際に使った方からのレビューです。自分と似たようなライフスタイルの人が利用し、満足していたら、それが「試してみようかな」という最初の一歩を後押しすると考えました。また、私がベビーシッターさんを探していたとき、ある方が前の雇い主からのレビューを面談に持参してとても参考になったので、同じ仕組みを作れればと思いました。

もうひとつは、メディアでの発信です。単にサービス内容を訴えるのではなく、具体的にどのように生活が変わるのかをお伝えできればと考えました。そこで、「核家族から拡大家族へ」というスローガンを掲げました。

言葉としてしっかり打ち出せたのは最近なのですが、当初から「家の中のことを家族だけが解決しないといけないわけではない」と感じていました。私が今お願いしているタスカジさんは、先ほどお話したように、まさに第2の家族。家族が拡大していく、家族の定義が少し広がるようなイメージを当初から持っていたので、ブログやSNSでそのことを発信したり、プレスリリースを地道に出版社などに持ち込んで「ライフスタイルが変わるんです」と説明していました。すると、そうした打ち出し方に興味を持った雑誌やWebメディアが取り上げてくれて、少しずつ「タスカジ」が知られるようになっていきました。

そうして地道に家事代行サービスの浸透に取り組む中で、たとえば当時の政権において「女性の活躍のための外国人家事支援者受け入れ」が進められたり、それこそ冒頭で触れた“逃げ恥”がヒットしたりして、世の中の風潮もだんだんと変わっていったのです。

(人気の作りおき)


監修者 at 株式会社タスカジ | Website | + posts

株式会社タスカジの代表取締役。国内大手ITベンダーに入社。その後MBA(経営学修士)を取得。2013年に共働きの家庭における新しいライフスタイルを実現するため、起業。2014年に家事代行マッチングサービス「タスカジ」を開始し、2017年に日経BP社 日経DUAL「家事代行サービス企業ランキング」1位、「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2018働き方改革サポート賞」を獲得。
多くの人が自分らしく生きる時間を増やせる社会を実現するため、一般家庭でも気軽に質の高い家事代行を利用できる仕組みを作るという想いで「タスカジ」を立ち上げた。

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