二十四節気の一つ「小寒」は年で一番気温が低い「寒」の時期のスタートです。この時期は日本の伝統食品にとって大切なタイミングです。日本酒や味噌など、製造の過程で発酵を行う食品の多くはこの時期に仕込みを行います。「寒仕込み」や「寒造り」と言われる物はこの時期に作り始めた物を言います。
日本酒の醸造の担い手が生まれたのは「寒造り」のルールから
自然の変化に合わせて発酵をコントロールしていた時代では寒の時期に作る方が安定して高品質な物が出来たようです。日本酒は最初、寒以外の時期でも作られていたのですが、江戸時代の酒造技術の先端にあった伊丹の蔵元が「寒酒」と呼ばれていた寒の時期に仕込みを行う製法を発展させて高品質な日本酒を作り出すようになります。
それが後に幕府の指導でお酒は寒の時期のみ醸造するように定められます。このため、冬に仕事ができない農家の人や地域によっては漁師さんが酒蔵に出稼ぎに出るようになって「杜氏」と呼ばれる専門家としてもお酒に携わるようになります。
現在では空調施設や滅菌処理の方法が進化しているので一年を通じて安定した発酵のための環境を整えた工場も多くありますが、昔ながらの寒造りには冬季限定で働く杜氏さんもたくさん活躍されています。
元は女性の仕事だった酒造り。気楽に楽しめる「寒造り」に挑戦してみませんか?
日本酒の仕込みに重要な働きを担う「杜氏」ですが、元は「刀自」の字を当てられていたそうです。これは古い言葉で「家を取り仕切る主婦」を意味する名前でした。かつてはお酒の醸造は女性の仕事であったのが産業となっていく上で力仕事が増え、男性の仕事に変化して今に至ると考えられているのだとか。
そんな歴史を踏まえて、今年はお家でも何か寒仕込みに挑戦してみるのもおすすめです。
寒の時期が発酵食品の仕込みに向いているのは暑い時期より雑菌が入りにくいという衛生上の理由の他にも発酵のスピードが緩やかという利点も挙げられます。暑い時期だと滅菌や消毒がうまく行っても発酵のスピードが早すぎて失敗してしまう事もありますので寒仕込みは発酵食品ビギナーさんがトライするのにいい時期でもあるんですよ。
本格的なお味噌を作るなら今がチャンスです。また、発酵に適した温度が比較的高めのぬか漬けは寒の時期は向きませんが、昆布だしと塩でカブや大根、白菜、キャベツなどを漬けるいわゆる「一夜漬け」は冬期の方が失敗なく作れます。暖かい時期より発酵に時間がかかるので食べてみて漬かりが浅ければもう一晩寝かせてみる、というようにゆっくり漬かるのを楽しんでみて下さい。
漬け方は簡単。昆布だしを作って冷ましておき、塩をふりかけた野菜に鷹の爪を数本乗せ、冷めた昆布だしをかけて重しをかけて一晩置きます。バネで重しをかけられるピクルスメーカーがあると便利ですが、ステンレスのボウルに入れた出汁と塩をかけた野菜の上にラップをかけて埃よけにし、その上にお皿を積み重ねて重しにする方法でも作れます。
塩分濃度は海水程度なので出汁に塩を入れて溶かして濃度を確認する方法もおすすめです。塩を控えすぎると漬かりませんので加減がわからないうちは多めに塩を入れて始めてみましょう。辛すぎたら水に入れて塩を抜き、味を整えればOKです。
お漬物はあまり食べない…という場合、フルーツ酢はいかがでしょうか。いちご、りんご、キウイ、柿など冬においしい果物で仕込んでみましょう。冬は漬かりに時間がかかる事もありますが過発酵で失敗しにくいので気長に待ってみて下さい。果物、酢、砂糖はすべて同量ずつ、1:1:1がフルーツ酢の基本です。
寒い時期だからこそできるおいしさもあります。ぜひ手作りの「寒仕込み」を楽しんでみてくださいね。
記事:ケノコト編集部