秋のフルーツの中でも日本らしいイメージがあるのが柿ではないでしょうか。
柿は中国が原産の果物ですが奈良時代頃既に日本では栽培して果実を食べる習慣がありました。柿は中国、日本以外にもアメリカにもありますが基本はいわゆる「渋柿」でそのまま生食できる「甘柿」は日本で生まれた突然変異種なのだとか。
そんな日本の柿は種子島からヨーロッパへ伝えられ、現代でもスペインなどで栽培されているのですがご当地独自の名前はなく、なんと「kaki」と日本語のままの名前で呼ばれています。ちなみにヨーロッパでは生をカットしていただくより崩れそうなほどに熟したいわゆる「完熟柿(ずくし/じゅくしがき))にしてスプーンですくったりシャーベットにしたりして食べるのがポピュラーのようです。
栄養豊富なフルーツ。これから流行る風邪への対策にも
柿はビタミンを豊富に含み、ビタミンCやビタミンAとなるβカロテンを豊富に含んでいます。ビタミンCはみかんのおよそ二倍程度も含まれています。そのため「柿が赤くなると医者が青くなる」という言葉もあるのだとか。(りんごやトマトでも同じような言い方をしますが、元々は少し違う言い回しで意味が似ている外国の言葉を柿のことわざにあてはめたという説があります)
また、干し柿にするとビタミンCは損なわれますが逆にβカロテンが凝縮されるので、乾燥しがちな季節に粘膜を守る効果があるビタミンAを補給してくれます。生の柿は熟れすぎると腐ってしまいますが干し柿にすると甘くおいしくなる上に日持ちしますのでかつての日本では盛んに庭に柿の木が植えられ、干し柿が作られました。冬の保存食兼おいしいおやつとして愛された食べ物です。
干し柿は刻んで大根のなますに加えたりしておかずの材料としても親しまれて来ました。郷土料理になっている事も多いので今もおばあちゃんの味として味わっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
甘柿と渋柿の違いはタンニンの状態の違い
ちなみに干し柿の原料とするのは通常渋柿です。元々中国から渡ってきたのも渋柿でした。甘柿は渋柿の突然変異と考えられていますが、具体的にどこが違うのでしょうか。
この2つの味の違いを生み出すのは渋の状態です。実は甘柿にも渋柿と同程度の柿渋が含まれています。甘柿に含まれる渋は水分に溶けないのですが渋柿の物は水分に溶けるため、口に含むと渋の成分である「タンニン」が口の中で体のタンパク質と反応してきゅっと縮むような収れん効果を起こすのです。柿の渋みは味というより感覚が引き起こしている違和感と言っていいかもしれません。タンニンは干し柿にする以外にも焼酎に浸けたりする事で「渋抜き」できるので一手間かける事で渋柿もおいしく食べる事ができます。
体に良い効果のある柿渋の「タンニン」 でも、貧血のある人は注意
タンニンはポリフェノールの仲間で体にとって良い効果もあります。例えばお酒を飲んだ時に柿を一緒に食べるとアルコールの分解を助ける働きがあるので二日酔いしにくくなります。また、抗酸化作用があるので活性酸素の除去にも役立ちます。ビタミンが豊富な事と合わせてアンチエイジング効果の期待できるフルーツと言えます。
ただし、タンニンは鉄分と結びついて体外に排出する効果もあるので貧血の人は過食しないよう注意が必要です。過剰に心配する必要はありませんが一日に二個程度が摂取量の目安となります。
また、干し柿についても食べ過ぎには注意が必要です。あまくておいしく、ドライフルーツなので繊維質の摂取もできるのでダイエット中のおやつに良さそうですが意外にカロリーは高く、大体干し柿二個でご飯茶碗一杯分くらいのカロリーになります。また、干し柿はタンニンが凝縮されているので貧血はもとより、胃腸の働きを鈍らせてしまう事も。腸の動きが悪くて便秘になりやすい人は食べるのを控えた方が良いかもしれません。
栄養がぎゅっと詰まっている分、食べ過ぎには注意が必要ですが秋から冬に向けての栄養補給にぴったりの果物です。固めをサックリ、それともトロトロの熟した果実をスプーンで食べるなど楽しみ方の多いフルーツでもあります。ぜひおいしい柿で風邪に備えてくださいね。
記事/ケノコト編集部